こんにちは。江東区砂町の東砂内科クリニック、院長の渋田です。

「いびきが大きいと家族に言われた」
「横向きで寝るようにしているのに、まだいびきをかいているみたい」
「いびきは太っている人に多いイメージだけれど、自分は痩せているのになぜだろう」

このようなご相談は、外来でも意外と少なくありません。

いびきというと、「体質だから仕方ない」「少しうるさいだけ」と思われがちですが、実際には睡眠中の空気の通り道が狭くなっているサインでもあります。軽いいびきで済むこともありますが、中には睡眠の質を下げたり、日中の眠気やだるさにつながったり、睡眠時無呼吸症候群が隠れていたりすることもあります。

また、いびきについては「太っている人に多い」という印象を持たれる方が多いのですが、これは半分正しく、半分は誤解です。たしかに体重増加がいびきの一因になることはありますが、痩せている方でも、骨格や鼻づまり、口呼吸、喉の形、舌の位置などによって、いびきは十分起こります。

そして、いびき対策としてよく知られているのが「横向きで寝ること」です。
これは実際に効果を感じる方も多い方法ですが、横向きにさえなれば必ず改善するわけではありません。横向きでもいびきが続く場合には、姿勢以外の要因が関係していることが少なくないからです。

今回は、

  • 横向きで寝るといびきは改善するのか
  • 痩せ型でもいびきが起こるのはなぜか
  • 自宅でできる対策にはどんなものがあるのか
  • どんなときに受診を考えたほうがよいのか

について、順を追ってお話ししていきます。

いびきはなぜ起こる?まず知っておきたい原因

まず、いびきの仕組みから確認しておきましょう。

いびきは、眠っている間に空気の通り道である「気道」が狭くなり、そこを空気が通るときに喉の柔らかい部分が振動して音が出ることで起こります。
つまり、空気の通り道が狭くなっていることの結果として音が出ていると考えられます。

起きている間は、舌や喉まわりの筋肉がある程度緊張しているため、気道は保たれやすくなっています。ところが、眠ると筋肉がゆるみます。すると、舌の付け根や喉の奥の柔らかい部分が少し後ろに落ち込み、気道が狭くなりやすくなります。
この狭くなったところに空気が通ることで、「グー」「ゴー」といういびき音が出るのです。

いびきの出方には個人差があります。
軽くてときどき出る程度の方もいれば、毎晩大きないびきをかく方もいます。仰向けのときだけ強くなる方もいれば、横向きでも続く方もいます。こうした違いは、体格だけでなく、顎の形、喉の広さ、鼻の通り、舌の大きさ、筋肉の状態、生活習慣など、いくつもの要素が関わっているためです。

横向きで寝るといびきは改善する?睡眠時無呼吸症候群にも関係する?

結論からいうと、横向きで寝ることでいびきが改善する方は多いです。
特に、仰向けで寝たときにいびきが強くなるタイプでは、比較的効果が出やすい方法です。

なぜ横向きでいびきが軽くなるのか

仰向けで寝ると、重力の影響で舌や喉の奥の柔らかい組織が後ろに落ち込みやすくなります。
そうすると気道が狭くなり、空気が通るたびに振動が起こり、いびきが強くなります。

一方で横向きになると、舌や喉の組織が後ろへ落ち込むのをある程度防ぐことができます。
これにより空気の通り道が保たれやすくなるため、いびきが小さくなったり、出にくくなったりすることがあります。

これはとてもシンプルな工夫ですが、実際には理にかなった方法です。
「まず自宅でできることから試したい」という方にとって、横向き寝は取り組みやすい対策のひとつといえます。

横向き寝は根本治療ではない

ここで大切なのは、横向き寝は“改善しやすくする工夫”であって、“原因そのものを治す方法”ではないということです。

たとえば、もともと顎が小さい方、鼻づまりが強い方、口呼吸になりやすい方、喉の構造が狭い方では、横向きにしても気道が十分に広がらず、いびきが残ることがあります。
また、寝入りは横向きでも、眠っているうちに仰向けへ戻ってしまう方も多く、その場合は朝まで効果が続きません。

つまり、横向き寝はとても良い工夫ではあるものの、「横向きにすれば必ず解決する」とは限らないのです。
睡眠時無呼吸症候群でも、体位によって悪化しやすい方はいますが、無呼吸そのものがある場合は、姿勢の工夫だけでは不十分なこともあります。

横向きでもいびきが出るのはなぜ?改善しない原因

「横向きで寝ているのに、まだいびきをかいているようです」
このご相談もよくあります。

その場合は、姿勢以外の原因が関わっていることが少なくありません。ここでは代表的なものを順にみていきます。

もともと喉や顎の構造が狭い

いびきには、体型だけでなく、生まれつきの骨格や喉の構造も関係します。
下顎が小さい、顎が後ろに引けている、舌が大きい、扁桃が大きい、口蓋垂が長いなどの特徴があると、もともとの気道が狭くなりやすくなります。

この場合、横向きで多少楽になっても、通り道そのものが狭いため、完全には改善しないことがあります。
痩せ型の方のいびきでは、こうした構造的な要素が背景にあることがよくあります。

鼻づまりがあって口呼吸になっている

鼻が詰まっていると、睡眠中に自然と口呼吸になりやすくなります。
口が開くと下顎が下がり、舌が喉の奥へ落ち込みやすくなるため、いびきが出やすくなります。

花粉症、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、鼻中隔のゆがみなどがある方は、横向きでも鼻呼吸が十分にできず、いびきが続くことがあります。
朝起きたときに喉や口の中がカラカラに乾いている方は、口呼吸が関係している可能性があります。

枕の高さや首の角度が合っていない

横向き寝は、ただ横を向けばよいというものではありません。
首が不自然に曲がっていたり、顎が引きすぎていたりすると、かえって気道が狭くなることがあります。

枕が低すぎると頭が傾き、高すぎると首が不自然に曲がります。
また、柔らかすぎる枕は沈み込みによって位置が安定しません。
「横向きにしているのに改善しない」と感じる方では、姿勢そのものより、枕が体に合っていないことも少なくありません。

寝ている間に姿勢が変わっている

ご本人は「横向きで寝ている」と思っていても、睡眠中には無意識に寝返りを打っています。
特に深く眠るほど筋肉がゆるみやすく、自然に仰向けへ戻ってしまう方もいます。

ご家族から「寝始めたときは横向きだけど、夜中には仰向けになっていた」と言われるケースは珍しくありません。
つまり、姿勢を維持できていないことが原因の場合もあるのです。

喉まわりの筋力が落ちている

年齢とともに筋力が落ちるのは、腕や脚だけではありません。
舌や喉まわりの筋肉も少しずつ支える力が弱くなるため、寝ている間に気道がつぶれやすくなることがあります。

また、運動不足や口呼吸の習慣、姿勢の悪さなども、口まわりや喉の機能低下につながることがあります。

飲酒や睡眠不足が影響している

就寝前のアルコールは、喉まわりの筋肉をゆるめるため、いびきを悪化させやすくなります。
また、疲労がたまっていると睡眠が深くなりすぎて、喉がより落ち込みやすくなることがあります。

「疲れている日だけいびきがひどい」「お酒を飲んだ日は特にうるさい」と言われる方は、この影響が関係しているかもしれません。
姿勢の工夫をしても改善が不十分なときは、こうした生活習慣も一緒に見直すことが大切です。

痩せ型でもいびきは起こる?太っていないのにいびきが出る理由

ここまでみてきたように、横向きでもいびきが続く方の中には、体重の問題よりも、骨格や鼻の通りなど別の要因が関わっていることがあります。
特に「太っていないのにいびきが出る」という方は、この章が大切なポイントになります。

「いびきは太っている人に多い」と思われがちですが、実際には痩せ型の方、太っていない方でもいびきは十分に起こります。
この点は、意外と誤解が多いところです。

たしかに、体重が増えると首まわりや喉のまわりに脂肪がつきやすくなり、空気の通り道が圧迫されやすくなるため、いびきや睡眠時無呼吸症候群のリスクは上がります。
そのため、「太っているといびきをかきやすい」というのは確かに一面では正しいのですが、いびきの原因はそれだけではありません

痩せている方のいびきでは、

  • 骨格
  • 鼻の通り
  • 口呼吸の癖
  • 舌や喉の形
  • 筋力の低下

といった要素が関係していることが多いのです。

痩せ型の方でいびきが出やすい理由

痩せ型の方に多い背景として、まず挙げられるのが顎や顔まわりの骨格です。
たとえば、下顎が小さい方、顎がやや後ろに下がっている方では、舌の位置も後方に寄りやすくなります。起きている間は問題なくても、眠ると筋肉がゆるみ、舌の付け根が喉のほうへ落ち込みやすくなるため、空気の通り道が狭くなっていびきにつながります。

また、痩せ型の方では首まわりが細く見えることが多いのですが、それは必ずしも「呼吸の通り道が広い」という意味ではありません。
むしろ、骨格そのものが小柄で、もともとの気道のスペースが小さい方もいます。そうした場合は、睡眠中に気道が狭くなりやすく、いびきや無呼吸が起こることがあります。

さらに、鼻づまりも大きな要因です。
痩せている方でも、アレルギー性鼻炎や慢性的な鼻づまりがあると、鼻呼吸がしにくくなり口呼吸に傾きます。口が開くと下顎が下がり、舌が喉側へ落ち込みやすくなるため、結果としていびきが出やすくなります。
「太っていないのにいびきが出る」「朝起きると口が乾いている」という方は、鼻の通りがよくないことが関係している可能性があります。

痩せ型のいびきは体質だけで片づけないことが大切

痩せ型の方は、ご自身でも「太っていないのに、なぜだろう」と思いやすく、周囲からも「細いのにいびきがあるの?」と軽く見られてしまうことがあります。
そのため、本人が気になっていても、「体質だから仕方ないのかな」と受け流してしまうことがあります。

ですが、痩せ型のいびきにもきちんと理由があります。
そして、その背景がわかると対策も見えてきます。

たとえば、

  • 骨格の影響が強い方では寝姿勢の工夫が役立つことがあります
  • 鼻づまりがある方では鼻の治療や環境調整が重要になります
  • 口呼吸が癖になっている方では、鼻呼吸を意識するだけでも変わることがあります
  • 喉まわりの支えが弱い方では、生活習慣の見直しや喉・舌のトレーニングが意味を持つことがあります

つまり、痩せ型のいびきは太っている方とは別の対策が必要になると考えられます。

痩せ型でも睡眠時無呼吸症候群になる?受診が必要な理由

ここはとても大切な点です。
痩せているから睡眠時無呼吸症候群ではないとは言えません。

痩せ型の方は、「自分は太っていないから大丈夫だろう」と思って受診が遅れてしまうことがあります。
しかし、いびきに加えて、日中の眠気、熟睡感のなさ、朝の頭痛、口の乾きなどがある場合は、体型だけで判断せず、一度確認したほうが安心です。

太っていないから様子見でよいとは限らない

いびきがあるとき、「痩せているからまだ軽いはず」「もう少し様子を見てからでもいいかな」と思う方も多いのですが、太っていないことは放置してよい理由にはなりません。

とくに、

  • 以前よりいびきが大きくなった
  • 横向きにしても改善しない
  • 日中に眠気が強い
  • ご家族に呼吸が止まっていると指摘された
  • 口呼吸や鼻づまりが気になる

といった場合には、体型に関係なく一度評価を受ける意味があります。

いびきは「太っている人の悩み」と思われがちですが、診療の現場では、痩せ型だからこそ気づかれにくいタイプのいびきも少なくありません。
だからこそ、「太っていないのにおかしいな」と感じたときこそ、その違和感を大切にしていただければと思います。

横向きいびきの対策|自宅でできること

いびきの原因が重症でない場合には、自宅での工夫で軽くなることがあります。
無理なく続けやすいものから試してみるのがおすすめです。

横向き姿勢を保ちやすくする

単に横向きで寝るだけでなく、その姿勢を維持しやすくする工夫が大切です。
抱き枕を使う、背中側にクッションを置く、膝の間にクッションを挟むなどの方法は、寝返りで仰向けに戻りにくくするのに役立ちます。

「横向きで寝よう」と意識するだけより、物理的にサポートした方が続けやすい方は多いです。

枕を見直す

横向き寝では肩幅の分だけ高さが必要になります。
低すぎる枕は首が傾き、高すぎる枕は顎が引けて、どちらも気道を狭くしやすくなります。

理想は、横向きになったときに首から背中までがなるべく自然な一直線に近い状態です。
市販の横向き寝用の枕が合う方もいますが、大切なのは「商品名」よりも「自分の体に合っているか」です。

鼻呼吸をしやすくする

鼻が詰まっている方は、まず鼻の通りを少しでも整えることが重要です。
寝室の乾燥対策、花粉やほこり対策、寝る前の入浴などは試しやすい工夫です。

鼻づまりが続く方では、耳鼻咽喉科でアレルギーや副鼻腔の状態を確認したほうがよいこともあります。
いびき対策として口を閉じることだけを意識しても、鼻が通っていなければ苦しくなるため、まずは鼻呼吸の土台を整えることが大切です。

就寝前の飲酒を控える

お酒を飲むと眠りやすく感じる方もいますが、いびきの面では悪化要因になることが少なくありません。
とくに就寝直前の飲酒は、喉の筋肉をゆるめて気道を狭くしやすいため、いびきが強くなりやすくなります。

毎晩飲酒の習慣がある方は、量や時間帯を見直すだけでも違いが出ることがあります。

睡眠不足をためない

睡眠不足が続くと、眠りに入ったときに深く眠り込みやすくなり、その分、喉の力も抜けやすくなります。
「忙しい日ほどいびきがひどい」と感じる方では、疲労の影響が出ている可能性があります。

夜更かしや不規則な生活を整えることも、いびき対策として大切です。

口まわりや舌を意識する

いびきの背景に口呼吸や舌の落ち込みがある方では、口まわりの機能を意識することも役立つ場合があります。
唇を閉じる、舌を上あごにつける意識を持つ、口をしっかり動かして話す・発声するなど、日常の中でできることから始めるだけでも違ってきます。

こんな症状があるときは睡眠時無呼吸症候群にも注意

いびきはよくある症状ですが、次のようなサインがある場合は、単なるいびきではなく睡眠時無呼吸症候群が隠れている可能性があります。

  • いびきの途中で呼吸が止まっていると言われる
  • 大きないびきのあとに、しばらく静かになってまた再開する
  • 朝起きたときに頭痛がある
  • 口や喉が乾いている
  • 眠ったはずなのに熟睡感がない
  • 日中の眠気が強い
  • 集中力が落ちる
  • 会議中や運転中に眠くなる
  • 夜中に何度もトイレに起きる

こうした症状がある場合は、「いびきがうるさいだけ」とは言い切れません。
睡眠の質が下がっているだけでなく、将来的な健康への影響も考える必要があります。

いびきで受診を考えたほうがよいケース

先程のように睡眠時無呼吸症候群が疑われるケースでは、一度医療機関で相談することをおすすめします。

その他に

  • 横向き寝や枕の調整をしても改善しない
  • 鼻づまりが慢性的にある
  • 高血圧、糖尿病などの生活習慣病の治療を受けている

のようなケースでも受診した方がよいと思われます。

そして、いびきの原因によって相談先は少し変わります。
鼻の通りが気になる場合は耳鼻咽喉科、無呼吸や眠気が気になる場合は内科や睡眠外来、呼吸器内科などが対象になります。必要に応じて、自宅でできる簡易検査や、より詳しい検査につながることもあります。

「ただのいびきかもしれないし」と迷う方も多いのですが、迷うくらいの段階で相談していただくほうが、結果的には安心につながります。

まとめ

横向きで寝ることは、いびき対策としてたしかに役立つ方法です。

ただし、横向きでもいびきが続く場合は、姿勢だけではなく、顎や喉の構造、鼻づまり、口呼吸、枕の高さ、筋力低下、生活習慣など、ほかの要因が関わっていることが少なくありません。
また、痩せ型でもいびきは起こりますし、場合によっては睡眠時無呼吸症候群が隠れていることもあります。

まずは、横向き姿勢を保ちやすくする工夫、枕の見直し、鼻呼吸のサポート、飲酒や睡眠時間の見直しなど、無理のないところから始めてみてください。
それでも改善しない場合や、日中の眠気、寝ているときに呼吸がとまる、朝の頭痛などがある場合は、どうぞ早めにご相談ください。

いびきは「体質だから仕方ない」と思われやすいものですが、原因を整理することでできる対策が見つかることも少なくありません。
毎日の睡眠が少しでも楽になり、日中もすっきり過ごせるように、気になることがあれば一緒に考えていければと思います。